
『個人戦予選?第6戦』

吉留「うーん…ポーカーフェイスを身につける方法、か…」

池田「…そうなんだ。
コーチに言われたんだけど、
あたしって思ってることが顔に出やすいタイプみたいでさ」
吉留(華菜ちゃん、自覚なかったんだ…)
池田「それって麻雀ではすごく不利になるから、何とか直したいんだ」

池田「すーみんは対局中も表情が変わらないけど、何かコツがあるの?」
深堀「いえ、私はもともとこういう顔なので、特には……」
池田「文堂、いいアイデアない?」
文堂「そうですね…なるべく表情を変えないようにして、
ツモ動作や切る時間を一定に保つように意識するとか…」

池田「表情を変えない、か…。
よし、ちょっとやってみる!」
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池田「…こう?」
吉留「それなんか違うよ!」
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実況「個人戦予選、第6戦の出場選手です。
ここで各選手の能力を確認しておきましょう」
深堀純代(T) アガリ点と支払い点が半分になる
国広一(与) 次ツモを他家一列目とすりかえることが出来る
一局につき1回まで、半荘全体で4回使える
南浦数絵(M) 東場で最大4順の不利、南場で最大4順の有利
宮永咲(Y) リンシャン牌で和了確定・リンシャン牌を場の牌と交換できる

実況「なおこの対戦では、深堀純代選手を中心に実況・解説を進めていきます。
藤田プロ、この対戦の見所はどのあたりでしょうか」
藤田「注目は、龍門渕の国広が使う牌すり替えだ。
他家の捨て牌一列目にある牌ならば、どのタイミングでも持ってこれる。
つまり国広は全18牌のツモ候補を見ながら手を進めることが出来るわけだ。
スピード重視の近代麻雀においては、この能力は反則級の脅威だな。
…というか反則だろう、牌のすり替えなんて」
実況「そ、そのあたりはルールで決まったことですので…コホン。
深堀選手はどのように戦えばいいでしょうか」
藤田「アガリ点と支払い点が半分になるわけだが、そうはならないものもある。
まずはリーチ棒の1000点だ。
これは他家に比べて、2倍のコストが掛かっていることになる。
次に流局時の罰符。
一人ノーテンで3000点を支払うくらいなら、
強引にテンパイを取りに言って5800の手に振り込んだ方が安上がりだ。
リーチを控え、テンパイ維持を最優先に手を作っていけばいいんじゃないか」
実況「ありがとうございました。
それでは個人戦予選、第6戦の対局開始となります!」
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東家:深堀(T) 南家:宮永(Y)
西家:国広(与) 北家:南浦(M)
『東一局』親:深堀 ドラ1ソウ
<深堀配牌>

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実況「各選手動きなく、残すツモ牌もあと僅か。
このまま流局となるのでしょうか」

咲「カン」
実況「宮永選手のカンで、場に緊張が走ります!
これはリンシャンカイホウなのか!?」
咲「…切りました」
実況「宮永選手、リンシャン牌を場に出ている牌と交換しました」
藤田「テンパイ維持のためのカンだったようだな」
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実況「流局です。国広選手の一人ノーテンとなりました」

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『東一局一本場』親:深堀 ドラ西
<深堀配牌>

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深堀(10順目で純チャンのテンパイ…この西は通したい)

一「ロン」

一「西中ドラ4、12000は6000の一本場で、6300!」

実況「国広選手の跳満が直撃!
深堀選手、支払い点が半分になるとはいえ、大きな痛手です!」

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『東二局』親:宮永 ドラ3ソウ
<深堀配牌>

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一「リーチ!」

実況「で、出ました、国広選手の牌すり替え!!」

南浦「……」

一「ロン!」

一「リーチ一発、ドラドラ! 8000!」

実況「国広選手、牌すり替えからのリーチで満貫を和了!」
藤田「イーシャンテン時、他家捨て牌1列目に有効牌があれば
すり替えによって即座にテンパイすることができる。
よって他家は捨て牌1列目に中張牌を捨てにくくなるわけだが、
それでも3者が6牌ずつ切れば有効牌が出てくる公算が高い」

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『東三局』親:国広 ドラ5ソウ
<深堀配牌>

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一「ツモ。1300オール」

実況「国広選手のツモあがり!
なお深堀選手の支払いは半分の700点となります」

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『東三局一本場』親:国広 ドラ2ソウ
<深堀配牌>

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南浦「リーチです」

一「リーチ」

深堀「…リーチ」

実況「数順前からピンフ手を張っていた深堀選手ですが、
他家からのリーチが入ったのを見てリーチをかけました」
藤田「当然だな。
深堀にとっては他家のリーチ棒は一本2000点に相当する。
是非欲しいところだ」
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深堀「ツモ。メンピンツモドラ2、満貫です」
実況「その深堀選手が競り勝ちました! 満貫のツモあがりです!
アガリ点も半分になりますので、1100・2100となりますね」

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『東四局』親:南浦 ドラ発
<深堀配牌>

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<深堀手牌>

深堀「リーチです」
実況「深堀選手、ノミ手のリーチをかけました」
藤田「役がないからなあ。
まあ振り込んでも半分だ、他家のガードも甘くはなるだろう」
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深堀「ロン。リーチウラドラ1、2600は1300です」
実況「振り込んだのは国広選手。
やはり他家は、深堀選手に対しては守備が甘くなるようですね」
藤田「そこが深堀の優位な点でもあるな」

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『南一局』親:深堀 ドラ発
<深堀配牌>

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一「リーチ!」
実況「国広選手、2回目のすり替えからのリーチ!」
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一「ツモ! メンピンツモイーペーコードラ1、満貫!」
実況「2順後のツモあがりとなりました。
先ほどすり替えで持ってきた牌は2ピンだったようです」
藤田「イーペーコーの真ん中か。かゆいところだな」

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『南二局』親:宮永 ドラ3ソウ
<深堀配牌>


実況「場は南2局、南浦選手は2順の先行ツモとなります」
藤田「清澄の片岡とは丸っきり逆の能力というわけだな」
実況「ちなみに藤田プロは、好きなものは先に食べるタイプですか?
それとも最後まで取っておくタイプでしょうか」
藤田「最初に食べて、最後にもう一つ注文する」
実況「そ、そうですか…」
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南浦「ロン。タンヤオ3色、2000点です」
実況「南浦選手が初めてのアガリを見せました。
振り込んだのは宮永選手です。
宮永選手は元気がありませんね」
藤田「手を見ている限り、カン材が集まったのは二度三度ではない。
しかしイーシャンテンからテンパイまでが遠いようだ。
この点、イーシャンテンからが早い国広とは対象的だな」

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『南三局』親:国広 ドラ中
<深堀配牌>

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一「リーチ」
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一「ロン。2900は3200」


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『南三局一本場』親:国広 ドラ中
<深堀配牌>

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実況「国広選手のリーチに対して、他選手は慎重なうち回し。
流局となり、国広選手の一人テンパイです」

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『南三局二本場・供託1本』親:国広 ドラ5ソウ
<深堀配牌>

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一「リーチ」
深堀(4回目…最後のすり替えをここで使ってきた…?
南4局に南浦さんの親番が待っているから、
最後まで取っておくものと思っていたけど…
それほどいい手なのだろうか)
<深堀手牌>

深堀(…ドラの5ソウを切れば良い形のテンパイ。
国広さんには2ソウと8ソウが通っている。
切り札のすり替えを使ってきたからには、
国広さんの待ちはかなり良い形のはず。
ドラのシャボや単騎の待ちは考えにくい。
ここはこの手で勝負できる)
深堀「リーチ」

一「ロン! リーチ三暗刻ドラドラ、満貫!
12000は6000の二本場で、6600!」
(※編集注:びっくりして撮影を忘れてしまいました)

深堀(なっ…5ソウの単騎待ち!?)

実況「これは驚きました! ドラ単騎待ちです」
藤田「まるで意味がわからないな。
ここは南浦の親番に備えてすり替えを残しておくべきだ。
それを使ってまでのドラ単騎待ちとはな…。
本人には何かしらの確信があったのかもしれないが」
実況「国広選手、大きなリードを保ってさらに連荘です」

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『南三局三本場』親:国広 ドラ南
<深堀配牌>

深堀(ドラの南がトイツ…これはチャンス)
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深堀「リーチです」
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一「……」

深堀「ロンです」

深堀「リーチドラドラ、
5200は2600の三本場で、3500です」
実況「放銃はトップの国広選手でした。
やはり深堀選手のリーチへは、どの選手もある程度強気ですね」
藤田「ましてやダントツのトップではな」

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『南四局』親:南浦 南

<深堀配牌>


実況「さあ、いよいよオーラス。
南4局ですので、南浦選手は4順の先行ツモを行います」
藤田「大きな点差があるとはいえ、
ここでの南浦には油断が出来ないぞ」
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一「リーチ!」

南浦「!」

実況「先制リーチは国広選手だ!」
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一「ツモ! メンタンピンツモ、イーペーコードラドラ!」

実況「国広選手が跳満をツモあがり!
南浦選手の親番を一蹴しました!」

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実況「個人戦予選第6戦、トップを取ったのは…」

実況「龍門渕高校2年、国広一選手です!」

実況「藤田プロ、今回の対戦はいかがでしたか」
藤田「すり替えを使う国広の手が早い。
さらに他家は、一列目の捨て牌を持っていかれる危険から
牌の切り方に制限がつきまとう。
深堀は、他家からの警戒が弱まることを利用できれば
優位に試合を進めることができるな」
実況「ありがとうございました。それではまた次戦で、お会いいたしましょう」
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【対局後記】
1位 与太氏(一)
「一ちゃんの能力はまさしくチート級でした。
トーカが鎖をつけるのも納得です。
それにしてもバカツキだったなぁ。ガハハ。」
2位 T氏(深堀)
「RPGで敵味方のダメージを半分にするアイテムあるよね。
あんな感じ」
3位 Y氏(宮永)
「3度ほどカン材を抱えたまま一ちゃんに潰されました。
靴下履いてたからかな」
4位 M氏(南浦)
「南場の有利がまるで感じられない・・・おじいさま助けて!」