
『個人戦予選?第5戦』

透華「さて、お腹も膨れましたことですし、そろそろ会場へ戻りましょう」
一 「次は純と智紀が出る試合だからね」

一 「衣、ポテトがひとつ残っているよ」
透華「いけませんわね。きちんと全部食べないと、大きくなれませんわ」

衣 「残したわけではない。最後まで取っ…」
純 「もったいね。じゃ、オレがもらうわ」
衣 「あっ」

純 「ごちそうさんっと。 …ん、いま何か言ったか?」
透華「……」
一 「あちゃ?…」

衣 「こ、衣のハイテイポテトが……ぐすっ…」
純 「っ!? わ、悪い! いらねえのかと思って、つい…!」
衣 「ふえぇぇぇぇぇぇっ」

透華「じゅ???ん???……!」
純 「悪気は無かったんだって!」

店員「申し訳ございませんが、
大きな声は他のお客様のご迷惑になりますので…」
一 「す、すいません。ほら行こう、透華」

智紀「衣。 あとで何か買ってあげるから」
衣 「ぐすっ……ひっく…」
純 (や、やべえ…)

店員「あの?、お客様。只今ご家族連れ様を対象に
オモチャの景品が当たるくじ引きをやっているのですが、
宜しければサービスいたしますので、そちらのお嬢様に……」
透華「あら、それはあり難い申し出ですわ」
衣 「衣はオモチャなんか…! あ、あのペンギンは…」

衣 「はらむらののかのペンギンだ!」
一 「大きさは手のひらサイズだけど」
店員「こちらは人気商品でして、これが最後の一つになりますね」
衣 「最後のひとつ…」
店員「ではどうぞ、こちらの箱からくじを引いてください」

衣 「…くく…衣は今日この時ほど、天江の血に感謝したことはないぞ!」
店員(な、なんだか急に息苦しくなってきたぞ……)

衣 「これだあっ!」
・
・
・

衣 「わーい、やった、やったぞ?! はらむらののかとお揃いだ?!
お腹を押すとヘンな音がするぞ?! ののかに見せたらきっと喜ぶぞ?!」

智紀「ふう…一時はどうなることかと」
一 「結局くじはハズレだったけど、店員さんが良い人でよかったね」
純 (助かったぜ…)
透華「ですが、純が衣を泣かせたことは事実。
罰として明日、女装をして屋敷の周りの掃除をすること」
純 「ちっ…仕方ねーな。
…つーか女装って、オレはもともと女だっての!」
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実況「個人戦予選、第5戦の出場選手です。
それでは、各選手の能力を確認しておきましょう」
井上純(T) 鳴いた直後の捨て牌が無敵
他家は鳴くことも和了することも不可
津山睦月(与) 和了した回数分、得点に300点ずつ上乗せされる
沢村智紀(Y) 白が2役になる
吉留未春(M) 1位が和了したとき、その25%をもらえる
自分が和了したとき、その25%を4位へあたえる

実況「この対戦では、龍門渕高校の井上純選手を中心に実況・解説を進めてまいります。
藤田プロ、この対戦の見所はどこになりますか」
藤田「派手な能力を持った選手がいないからな。予想はしにくい。
風越の吉留の能力が、どれほど順位に影響するのかは注目している」
実況「井上選手について一言お願いします」
藤田「普段から麻雀をやっているとわかることだが、
鳴いた直後の捨て牌というのは、あがられることが多いものだ。
井上はその捨て牌が無敵になるというわけだが、
他家のリーチに対して鳴きを入れることで安全牌を増やしたり、
危険牌を抱えていてもリーチに対して前へ出ることが可能だ。
麻雀は上級者ほど仕掛けが上手い。そのタイミングに注目だ」
実況「ありがとうございました。まもなく予選第5戦の開始となります」
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東家:吉留(M) 南家:沢村(Y)
西家:井上(T) 北家:津山(与)
『東一局』親:吉留 ドラ8ピン

実況「起家は吉留選手となりました。井上選手は西家スタートです」
<井上配牌>


井上(さて、最初に流れが来るのは……)
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・
・

吉留「ロン」

沢村「…!」

吉留「三色赤ドラ、12000です」

実況「親の吉留選手、ダマテンの満貫で12000点!
これには沢村選手も警戒できなかったか!
なお吉留選手が和了したため、現時点で4位となっている
津山選手に、和了点の25%、3000点が振り分けられます」

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『東一局一本場』親:吉留 ドラ4ピン
<井上配牌>

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・
・

沢村「リーチ」

井上(智紀が動いたか…)

井上(悪いが、遠慮はしないぜ)

井上「チー!」

実況「井上選手がここで動く!切り出したのは赤5ソウだ!
さらに下家からポンをし、ど真ん中の5万を切っていきます!
井上選手のこの牌では、他家は鳴くこともあがることもできません!」

津山「り、リーチ」

井上「それだ」

井上「ロン! ホンイツ赤ドラドラ、8000は8300!」


井上(まさか、ここが出るとはな)

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『東二局』親:沢村 ドラ9万
<井上配牌>

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・
・

津山「リーチ」

吉留「リーチです」

実況「津山選手5順目でリーチ、これに対して吉留選手13順目に追いかけます」
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・
実況「流局、沢村選手と井上選手はノーテンに終わりました」

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『東三局一本場・供託2本』親:井上 ドラ南
<井上配牌>

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・
・
井上(流れは来ていない。注意するべきは…)

吉留「リーチ!」
井上(こいつか)
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・

吉留「ツモ!」

吉留「リーチツモ裏3、2000・4000は2100・4100です」

実況「吉留選手、満貫をツモあがり! 8000点のうち
25%にあたる2000点が、4位の沢村選手に振り分けられます」

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『東四局』親:津山 ドラ8ピン
<井上配牌>

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・
・

吉留「リーチです」

井上(やはり流れはこいつにあるか…)
「チー!」
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・
・

実況「流局です。
井上選手、鳴きで手を進めてテンパイを維持しました」

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『南一局一本場・供託1』親:津山 ドラ8ピン
<井上配牌>

井上(配牌2シャンテンか)

吉留「チー! チー! …ポン!」

井上(流れを渡すまいと必死だな。
だがおかげで、こちらの手が整ったぜ)

井上「リーチ!」
・
・
・
井上(ちっ…)

吉留「ロン!南ドラ1、2900は3200です。

井上(負けはしたが、強引な鳴きは流れに淀みをきたす。
これで何かが変わるかもな…)

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『南一局二本場』親:吉留 ドラ中
<井上配牌>

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・
・
実況「流局。テンパイは吉留選手と沢村選手です」

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『南一局三本場』親:吉留 ドラ9万
<井上配牌>

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・

井上「リーチ」
(編注・画像撮り忘れ)

井上「ツモ!リーヅモ、チートイドラドラ、跳満だ!」

実況「井上選手の跳満ツモ!トップを行く吉留選手との差が縮まります!」

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『南二局』親:沢村 ドラ1ピン
<井上配牌>


井上(ドラがトイツ…受けも悪くないな)
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・
・

井上「リーチだ」

井上「ロン!」

井上「メンピン赤ドラ、7700!」

実況「井上選手、これで吉留選手を抜いてトップに立ちます」

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『南三局』親:井上 ドラ8ソウ
<井上配牌>

井上(またドラが3枚…流れが来ているな)
・
・
・

井上「リーチ!」

吉留「…」

井上「ロン」

井上「リーチ一発ドラドラ、12000!」

実況「吉留選手、ここは一発で放銃となりました。
一位の井上選手が和了したため、12000点のうち
25%の3000点が吉留選手に割り振られます」
藤田「井上の赤5万を切ってのリーチ。
これによって、5万を跨いでの待ちが薄くなる。
赤5万でなければ、この7万は出なかっただろうな」

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『南三局一本場』親:井上 ドラ1万
<井上配牌>

・
・
・

沢村「リーチ」


井上「リーチだ」

実況「井上選手、沢村選手のリーチに対して強気の6ピン切りリーチ!
通りはしましたが、
ここは安全牌の2ピンを切ってリーチの方が良いのではないですか」
藤田「他家からアガリを引き出すためのリーチだな。
終盤、他家が降りる牌に困っているなかで、この筋引っ掛けは効果的だ」
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・
・

吉留「…」

井上「ロン!リーチドラ4、12000は12300!」

藤田「ほらな」
実況「井上選手、大きく差を広げました。
なお、一位の井上選手が和了したため、12000のうち
25%の3000点が吉留選手に割り振られます」
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『南三局二本場』親:井上 ドラ2ピン
<井上配牌>

井上(これで終わりだな)
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井上「リーチ!」


井上「ツモ!4000は4200オールだ!」

実況「井上選手、これはすごい!5連続のアガリです!
津山選手の得点がマイナスとなったため、対局終了となります!」

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実況「個人戦予選第5戦、トップを取ったのは…」

実況「龍門渕高校2年、井上純選手です!」

実況「藤田プロ、今回の対戦はいかがでしたか」
藤田「流れというものが本当にあるのか私にはわからんが、
小さなミスの積み重ねは不運という形になって
自らに戻ってくるものだ。
井上がミスをせずにツキをモノにした、ということじゃないか」
実況「ありがとうございました。それではまた次戦で、お会いいたしましょう」
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一 「おつかれ、純」
透華「よくやりましたわ。それでこそ我が龍門渕の麻雀部員ですわ」
井上「どーも」

透華「それに比べて智紀の不甲斐なさといったら…」
智紀「面目ない」
一 「まあまあ、誰にだって調子の悪い日はあるよ。
次、がんばろう!」
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【対局後記】
1位 T氏(井上)
「流れってあるんですかね。個人的には無いと思うんだけど」
2位 M氏(吉留)
「いかんせん南場の井上T氏がツキすぎでした。
次は4位にたくさん得点を与えていい気分になりたい」
3位 Y氏(沢村)
「東1に親満もらってそのまま・・・使えない子状態」
4位 与一氏(津山)
「むっきーらしいと言えばそうですが、
不甲斐ない……さすがにこれは凹みます。
次はがんばるぞー!」