
智美「ビギナーズラックってのは
初心者だけが持っている強運のことだ。
だからユミちんは、あえて佳織に
麻雀の基本を教えなかったのさ」

佳織「初心者だけの強運…
本当にそんなことがあるのかな?」
智美「真偽のほどはともかく、
佳織は実際に何度も役満をあがっているじゃないか」
桃子(なるほど、そういうことだったっすか)

桃子(ビギナーズラックは、何も麻雀だけとは限らないっす!
私もまた加治木先輩に憧れる恋の初心者!
ビギナーでいる限り強運が訪れ続けるということっす!
そう、ビギナーでいる限り、今までのように強運が……
…ということは、私と加治木先輩は
いつまでも今のまま進展してはいけないってことに…)

ゆみ「なるほど。
ビギナーズラックを持った初心者であり続けることと
それを失ってでも先へ進むことのどちらが望ましいか、か」
桃子「そうっす…加治木先輩はどう思うっすか?」
ゆみ(妹尾のことを言っているのか)
ゆみ「もちろん私も、初心者のままであり続けることが良いとは思わない。
強運を犠牲にしてでも前へ進まなければ、本当の意味での進歩はないだろう。
だが私は同じくらいに初心というものが大切だと思っている。
モモも覚えているだろう、初心者だった頃特有の新鮮な感動や驚きを。
私は初心と進歩が両立できれば最高の形だと思っているんだ」
桃子「初心と…進歩…」

桃子「ありがとうございます、加治木先輩!
私、吹っ切れたっす!」
ゆみ(…なぜ妹尾の話でモモが吹っ切れるんだ?)
桃子「私はもう迷いません!
初心を忘れずに、ビギナー卒業を目指すっす!
先輩も…協力してくれるっすか?」
ゆみ「それは構わないが…
モモはもうビギナーではないだろう」
桃子「きゃっ、先輩ったら大胆っす!!」
ゆみ「??」
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実況「個人戦予選、第17戦の出場選手です。
各選手の能力について確認いたしましょう」
妹尾佳織(T) 『ビギナーズラック』
役満テンパイをすれば、次順のツモで和了できる
加治木ゆみ(与)『チャンカン』
テンパイ時、他家のあらゆるカンでチャンカンが成立する
『和了後の差しこみ』
他家の和了時、裏ドラをめくる前に差し込み宣言をすると、
他の2名の手牌がオープンされ、差し込める状況であれば
そちらへ差し込むことで、最初の和了がキャンセルされる
蒲原智美(M) 『裏ドラが乗るといいなぁ』
リーチして和了したとき、
次のカン裏が追加のドラ表示牌となる
片岡優季(Y) 『タコスパワー』
東場で最大4順、ワンパイより先行ツモ
『タコス切れ』
南場で最大4順、牌を伏せたままツモ切り

実況「藤田プロ、この対局ではどこに注目いたしましょう」
藤田「まずは東場に力を発揮する片岡に対し、
他の選手がどう対応するか。
その後は差し込み能力のある加治木が
妹尾の役満、蒲原の高得点を警戒しつつ
試合を作っていくことになるだろう」
実況「ありがとうございました。
なおここまでの各選手の成績ですが、
妹尾選手、2戦して+30の5位
加治木選手、3戦して?41の19位
蒲原選手、3戦して?49の20位
片岡選手、2戦して+17の12位
となっております。
それではまもなく、予選第17戦の対局開始です」
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東家:加治木(与) 南家:妹尾(T)
西家:片岡(Y) 北家:蒲原(M)
『東一局』親:加治木 ドラ2ピン
<東家・加治木配牌>

<南家・妹尾配牌>

<西家・片岡配牌>

<西家・片岡配牌(4順先行ツモ後)>

<北家・蒲原配牌>


実況「いよいよ対局開始です。
さっそくですが、注目は清澄高校の片岡選手。
東一局は4順の先行ツモをすることが出来ます」

藤田「3シャンテンから2シャンテンと手が進み、
受けも広くなった。最も力を発揮する東一局で
起家を引きれば理想的だったんだが」
・
・
・

優季「リーチだじぇ!」

実況「やはり先制のリーチは片岡選手。
得意とする東場ではスピードが違います。
待ちは3?6万」

ゆみ「リーチ」

実況「しかし親番の加治木選手がこれを追いかける!
待ちはペン3ソウ」
・
・
・

優季「ツモ!」

優季「リーチツモ、裏は乗ってないじぇ」

実況「片岡選手が500・1000の和了!」

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『東二局』親:妹尾 ドラ6ソウ
<東家・妹尾配牌>

<南家・片岡配牌>

<南家・片岡配牌(3順先行ツモ後)>

<西家・蒲原配牌>

<北家・加治木配牌>

・
・
・

優季「リーチ!」

実況「ここも片岡選手が先制リーチ!
3?6ソウのリャンメン待ちです」

智美「リーチだな」

実況「10順目、蒲原選手が追いつきました。
ドラを頭にしてのピンフ手、4?7万待ちです。
さあどちらが和了するのか」
・
・
・

優季「ツモだじぇ!」

優季「リーチツモ、裏はまた乗ってないじぇ…」

実況「片岡選手が700・1300の和了!」

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『東三局』親:片岡 ドラ北
<東家・片岡配牌(2順先行ツモ後)>

<南家・蒲原配牌>

<西家・加治木配牌>

<北家・妹尾配牌>


実況「連続で和了した片岡選手が親番を迎えます。
この勢いに乗って他を突き放すことができるのでしょうか」
・
・
・

優季「チー!」

実況「片岡選手、カン4万を鳴いてタンヤオのテンパイ」

優季「ツモ!」

優季「500オールだじぇ!」

実況「これで片岡選手、対局開始より3連続の和了」

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『東三局一本場』親:片岡 ドラ南
<東家・片岡配牌(2順先行ツモ後)>

<南家・蒲原配牌>

<西家・加治木配牌>

<北家・妹尾配牌>

・
・
・



優季「リーチ!」

実況「勢いの止まらない片岡選手、2順目でのリーチ。
5ソウと2ピンのシャボ待ちです。
読み材料の少ない中、各選手はどう対応するでしょうか」


実況「蒲原選手、ここで打2ピン!」

優季「ロン!」

優季「リーチ赤、裏はまたまた乗ってないじぇ…」
実況「3900は一本場で4200のアガリとなりました」

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『東三局二本場』親:片岡 ドラ3万
<東家・片岡配牌(2順先行ツモ後)>

<南家・蒲原配牌>

<西家・加治木配牌>

<北家・妹尾配牌>


実況「ここまで4連続和了の片岡選手。
いずれも高い手ではありませんでしたが、
こつこつと積み重ねて37400点。
他の選手はそろそろ止めたいところですね」
・
・
・

加治木「ポン」
実況「加治木選手、白を鳴いて5万と6ピンのシャボ待ちテンパイ」

藤田「マンズもピンズも3面張に変化のある良形だ」

優季「まだまだ終わらせないじぇ! リーチ!」


実況「片岡選手のリーチ! 9万と1ソウのシャボ待ちです」


実況「蒲原選手もここでテンパイ!」
・
・
・

優季「ツモ!」

優季「リーチツモ、裏ドラは……」

実況「…またも乗りませんでしたね。1300オールは1500オール。
それでも片岡選手は5連続の和了、持ち点を4万点台に乗せました」


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『東三局三本場』親:片岡 ドラ2万
<東家・片岡配牌(2順先行ツモ後)>

<南家・蒲原配牌>

<西家・加治木配牌>

<北家・妹尾配牌>

・
・
・

優季「ここで決めるじぇ! リーチ!」

実況「片岡選手、イーペーコーに赤ドラを抱えてのリーチ!
これまでの5連続の和了がいずれも2ハン以下、
4度のリーチも裏ドラが乗りませんでしたが、
ここにきて文句なしの高得点リーチです!」

蒲原(これ以上離されるわけにはいかないなあ)

実況「蒲原選手、ピンフのテンパイ。
しかしリーチには行きませんね」
藤田「加治木の差し込みに期待しているんだ。
片岡にこれ以上離されたくない点で利害は一致。
しかしリーチをかけると、裏ドラが乗れば7700まである。
そこであえてリーチをせず、ピンフのみの手で待つ。
万が一自分が振り込むことになっても、
片岡が高得点であれば加治木からの差し込みが期待できる。
無論、片岡のツモあがりならば確実に防ぐことができる。
実況「ということは、この時点で片岡選手のツモあがりは…」
藤田「なくなった、ということだ」

実況「チートイツでテンパイの加治木選手、
ここで蒲原選手の当たり牌である8ピンを持ってきました。
片岡選手の現物だけに、これは出るでしょう」

智美「ロン」

智美「ピンフのみ。1000点は3本場で1900点」

実況「片岡選手の連続和了が止まりました」

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『東四局』親:蒲原 ドラ發
<東家・蒲原配牌>

<南家・加治木配牌>

<西家・妹尾配牌>

<北家・片岡配牌(1順先行ツモ後)>

・
・
・

加治木「リーチ」



実況「片岡選手、7ソウを切らず手を崩しました」


ゆみ「ロン」

ゆみ「2600」

実況「これで東場が終了となります。
大きなリードを持った片岡選手ですが、
苦手とする南場でこのリードを守ることができるのでしょうか」

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『南一局』親:加治木 ドラ發
<東家・加治木配牌>

<南家・妹尾配牌>

<西家・片岡配牌(1順のツモ切り)>

<北家・蒲原配牌)>

・
・
・

優季「リーチ!」

実況「不得意とする南場、1順の不利がありますが
先制リーチは片岡選手!」

ゆみ「チー」

実況「2鳴きの加治木選手、ペン7ソウで
チンイツのテンパイ!」

実況「蒲原選手も2?5万でテンパイ!」

佳織「リーチです」

実況「さらに妹尾選手がリーチ!
3万と9万のシャボ待ちで、
ツモれば三暗刻となります。
さあ、激戦となった南一局!
あがるのは一体どの選手なのでしょうか!」
・
・
・

佳織(…ちがう)


ゆみ「ロン」

ゆみ「チンイツ、12000点」

佳織「は、はい?…」

実況「ここを制したのは加治木選手!
親満貫の12000点に加え、
2人分のリーチ棒を獲得いたしました」

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『南一局一本場』親:加治木 ドラ1ピン
<東家・加治木配牌>

<南家・妹尾配牌>

<西家・片岡配牌(1順のツモ切り)>

<北家・蒲原配牌)>

・
・
・

佳織「ぽ、ポンです」

実況「妹尾選手はダブ南を鳴き、ドラの単騎待ちに受けました」

実況「これに対して蒲原選手、妹尾選手の当たり牌である
1ピンを押さえ、中切りのリーチ!
待ちは1ピンと3ピンになります」

ゆみ「ポン!」

実況「加治木選手、蒲原選手の切った中を鳴いてテンパイ!
待ちは2?5ピンです」


ゆみ「ロン」

ゆみ「2900は3200」

実況「振り込んだのは片岡選手!
これで1位と2位が入れ替わりました!」

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『南一局二本場』親:加治木 ドラ7ピン
<東家・加治木配牌>

<南家・妹尾配牌>

<西家・片岡配牌(1順のツモ切り)>

<北家・蒲原配牌)>

・
・
・

智美「ワハハ、リーチ」

実況「蒲原選手、ドラを2枚抱えてのリーチ!」


実況「片岡選手、チートイツのテンパイ!」

佳織「リーチです」

実況「妹尾選手が蒲原選手を追いかけます!」


実況「片岡選手、7ピンを持ってきたところで長考。
妹尾選手に対して8ソウが切りにくいか。
安全牌を切ってテンパイを崩しました」
・
・
・

佳織(…ちがう)

智美「ロンだな」

智美「メンタンドラ3、8000点は8900点」

佳織「あ、あの、点棒がなくなっちゃいました?…」

実況「放銃は妹尾選手!
持ち点が0を切ってしまいましたので、
これで対局終了となります!」


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実況「個人戦予選第17戦、トップを取ったのは…」

実況「鶴賀学園3年、加治木ゆみ選手です!」

実況「加治木選手が序盤にリードを取った片岡選手を逆転しました」
藤田「片岡の5連続和了があったが、点数が伸びなかった。
ドラの一枚でも乗っていれば違う展開になっていただろうな」
実況「妹尾選手は4位という結果」
藤田「南一局の中盤、6ピンを抱えていれば四暗刻が確定していた。
役満のテンパイというのも大変なものだな。
しかし役満をあがったとしても、加治木の差し込みで
防がれていたはずだ。
試合を作る、ということでは加治木の能力が秀でているな」
実況「ありがとうございました。それではまた次戦でお会いいたしましょう」
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【対局後記】
1位 与一氏(加治木)
「みんなに芽があって接戦でしたが、親のチンイツを制せたのがデカかった。
能力はー、いい牽制になってると思います。」
2位 Y氏(片岡)
「半荘で4回リーチして和了して、1枚も裏ドラが乗らない確率って
どれくらいですか?わかりません><」
3位 M氏(蒲原)
「裏ドラがのったせいで終わってしまった。こういうときにこの能力は考えものだなぁ」
4位 T氏(妹尾)
「ビギナーズラックといえば、初めていった競馬やパチスロでは
大勝した覚えがあります」
これまでの対戦結果は
こちら